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漫画『公家侍秘録』作品紹介
概要
- 著者:高瀬理恵
- 発行:小学館
- 連載:ビッグコミック
物語
舞台は江戸時代も末に差し掛かった京。微禄の公家・日野西晴季に仕える青侍・天野守武。京も京とて、晴季の一人娘である薫子にひっかきまわされながら、生活のために苦労をしていた。世間からは三石さんなどと呼ばれる身分ではあったが、守武は知られざる役目を持っていた。日野西家に代々伝わる、天皇から賜りし銘刀・粟田口久国を守ること……それが刀守としての彼の務めであった。
魅力
江戸時代を描く作品というと大概のものが花のお江戸を描いているが、本作の舞台は落ちぶれた公家も数多くいたとされる京。守役として命をかける者、家名のために汚れ仕事をする者、亡き者に想いを馳せながら日々を生きる者……様々な人間模様と文芸に関する描写。それらを「守役」という設定によって繋げ、興味深く読ませる。画風としても女性作家らしさを残しながら、読み易さと迫力の双方を兼ね備えている点を見落としてはならないだろう。一抹の寂しさを残す読後感が心地良い作品。
作品詳細
- 天野守武
- 日野西家に代々仕え、同時に粟田口久国を守ることを役目としている。
- 晴季や薫子が公家という立場のために勤めることができない仕事(茶屋の帳付け等)を請け負うことが多く、事件に巻き込まれ易い。
- 文芸に広く通じている。
- 母を早くに流行風邪で亡くし、同じく刀守りであった父も既にこの世を去っている。
- 槍刀術は京の八流と呼ばれる、かつて鬼一法眼が伝えたとされるもの(源義経もこの流派であるとする説がある)を修めており、劇中では今の所、負け無し。
- 意外と女遊びもする。――が、女性とは縁が続かない。薫子は色んな意味で例外なのだろう。
- 父が守役を務めていた期間、彼がどのような働きをしていたかは不明(彼の知己としては、晴季などは別として、桂木出雲だけが判明している)。
- 守役には今の所話に出てきたものでは、刀守り、古筆守り、香守り、茶器守り、花守り、琵琶守りなどがある(例外として幻術使いなどもいる)。また、これらの守役は大半が物語の中で役目を捨てる場合が多い。守武は「守役である前に人であることの方がずっとええに決まっておりまする」と他の者に言いこそすれ、それは他者を憐れみ、己の役目に空しさを感じる、彼の心根の素朴さが出たものだろう。故に彼は貧乏くじ(笑)を引いても、笑っていられるに違いない。
- 作者の別作『首斬り門人帳』にも粟田口久国の守役として登場している。――天保年間初期、武士の次男坊として気ままに暮らす神崎又平は、首斬り浅右衛門の二つ名を持つ試刀家・六代目山田浅右衛門吉昌(実在)と出会う。武士として、また人として、又平は成長していく。
- 日野西家
- その来歴は確かなものらしく、五摂家に加わる近衛家の門流にあたる。官位は従四位。公家の官位には武家と同じく正と従があり、更にそれに位がある。具体的には、正一位→従一位→正二位→従二位……となり、従八位まである。よって、従四位は大体、中くらいに位置することになる。武家のはちょいとややこしいが、興味のある方は調べてみると良いだろう。注意してほしいのは、現在の警察や軍隊と同じく役職と階級は必ずしも一致しないということであるが、これくらいは一般常識なので蛇足かもしれない。
- 現在の当主は晴季。無役であるが、晴季には無理に役目をもらうほどの気は無いようだ。奥方は一人娘である薫子が幼い頃に亡くなっている。死因は守武の母親のそれと同じ。
- 名刀・粟田口久国を家宝としているが、それは門流にある者以外にはあまり知られていない――ということになってはいるものの、御公家さんは本作でも口が軽いため、しばしば騒動になる。また、刀である以上は手入れが必要となるわけで、その都度、人目に触れてはこれまた騒動になったりする。薫子が「そんなものは売ってしまえば良い」と云うのもあながち的外れではない。それは守役である守武を心配してのことか、はたまた、茶菓子や酒といった贅沢に飢えているからなのか……恐らくは両方である。
- 粟田口久国
- 本作の銘が真であれば、平安末期から鎌倉末期まで京(当時は山城国)の粟田口という地に居を構えた刀工集団・粟田口派の国友、久国、国安の三兄弟(朝廷のお抱えとして有名という意味で、他にも兄弟はある。また、彼らより重宝された者もある)の内、久国が作ったとされる物の内の一つということになる。本作品中では地を晒すことが滅多に無いことに加え、漫画であるから刃文も確認できないため、どのようなものかは不明だが、大まかな形は一般的な古刀と大差無いようで、長さもあまり無い上、太くも細くも無いといった風である。ある意味、日野西家に非常に似合っていると云える。
各巻収録話
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- 刀守り
- 公家荒らし
- 京の花闇
- びんぶく
- 古筆守り
- 幻術
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- 都の人形
- 春の通し矢
- 秘聞香(前編)
- 秘聞香(後編)
- 印地打ち始末(前編)
- 印地打ち始末(後編)
- 真贋、紙一重(前編)
- 真贋、紙一重(後編)
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- 野分
- 袴垂(前編)
- 袴垂(後編)
- 黄泉送りの鍔(前編)
- 黄泉送りの鍔(後編)
- 夢の名残
- 貴船川の姫君(前編)
- 貴船川の姫君(後編)
-
- 菓銘重宝
- 百世の守
- 江戸の土産話
- 名椿の森
- 寒山・拾得(前編)
- 寒山・拾得(後編)
- 清水窯の姑嫁
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- 身中の虫(前編)
- 身中の虫(後編)
- 因果の屏風(前編)
- 因果の屏風(後編)
- 打ち出の小槌
- 選ばれし楽人
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